![]() 家族ができるわよと
ママから聞いたのは 桜にはまだ早い早春の夜だった 思わず手を伸ばしママのお腹へ 震える掌から伝わる君の息吹き 肌寒い夕暮れの街 見つけたオモチャのピアノ 呆れ顔のママ 気が早いわねと笑った そうかとつられ笑い いいさ気長に待つさ いつか奏でておくれ パパとママの歌を 時折パパはとても不安になる 何もできないし 自信もまるでない そんな時ママの お腹に耳をあてる 君は言ってくれるね もうすぐだよと まだ見ぬ君よ初めて逢う時に なんて言葉をかけよう きっと声にならないだろうが 生まれてくれて ありがとう 蜩がさんざめく夏の買物帰り 縁日の明かり ふとママが足を止める 来年は三人ね そう呟くママの 手を強く握り返し重なる影法師 初雪舞うクリスマス 産まれそうとママの電話 ドラマではないが もうあたふたするばかり 病院へ向かう中思わず神頼み どうか無事で元気に 生まれておくれよと 時折パパはすごく不安になる 親になるなんて なんかピンとこない そんな時ママの お腹に耳をあてる 君は言ってくれるね 早く逢いたい まだ見ぬ君よ初めて逢う時に なんて言葉をかけよう きっと声にならないだろうが 生まれてくれて ありがとう 生まれてくれて ありがとう |
![]() 軽い殺意を走らせ 目覚まし投げて
昨日の酒に覆われた 頭もたげる 読みもしない朝刊 何も語らぬテレビ 澱みきった職場 ただ食う為に 今日もまたくたびれた靴を履く 同じ事を繰り返し こなしているだけ 新しいことなんか 誰も望まない 要領だけの同僚 無能な上司 無理ばかり言う客 やり過ごす為に 今日もまた無表情を装う こんな生き方望まない こんな生き方俺じゃない 自分らしく歩きたいだけなのに 今の顔を見てごらん 今の顔は君じゃない すべての種は自分が蒔いているよ 夜通し酒にまみれ 撒き散らす愚痴 誰も分かりゃしない くすぶる不満 やさぐれた酒場 うつろな目の客 くたびれた店主 酔いどれるために 今日もまたグラスを空けていく こんな日常欲しくない こんな日常本当じゃない 自分らしく笑いたいだけなのに 今の顔を見てごらん 今の顔は君じゃない すべての嘘は 自分が招いてるよ 今の君はつまらない 今をすべて受け入れてごらん そこから何かが見えてくるから・・・ |
![]() 試したことになぞって 犯した帳は消えない
何度踏みしめても 芽吹かない種は 唯散らばって 道を記すことはない 君を惑わす 僕の言動 剥がれ落ちて 瞬く間に消えた 偽りを呼ぶ声に 色を咬む二人なら 形も見えないほどに 崩れてしまえばいい 醒めないはずのうつろい 掻き消すくらいの意味を たとえ月が見ていても 教えてはくれないだろう 想い遮る素振りに 伸ばした手と手は触れない やっと掴みかけて ほどけた絆も 赤く焼け落ちて 行く先も照らせはしない 僕を惑わす 君の衝動 高く跳ねて この奥に響く 振りほどいた指先で 空になぞった言葉も 朽ち欠けたときの中に 行き場を失い消える 見慣れたはずの仕草も 今は儚い陽炎 モノクロになった君の 色を取り戻せるなら 君を惑わす 僕の言動 剥がれ落ちて 瞬く間に消えた 偽りを呼ぶ声に 色を咬む二人なら 形も見えないほどに 崩れてしまえばいい 醒めないはずのうつろい 掻き消すくらいの意味を たとえ月が見ていても 教えてはくれないだろう 偽りを呼ぶ声に 色を咬む二人なら 形も見えないほどに 崩れてしまえばいい |
![]() 旅の途中で通りすぎた街角に
独り立ちつくす長い髪の黒の女 瞳の奥に写る赤い目の俺を見つけ 哀しいほほえみでいつしか虜にした 哀しい恋の始まりと知っていながら 疲れた女と男は雨の中へ歩きだした 傘もささずにみしらぬ街を歩き続け 俺と君に振りかえる人もいない 恋に落ちたまま二人は雨も気付かず ドラマの終わりが来る事も知らなかった 哀しい恋の終わり方を知っていながら 疲れた恋にしがみついた君が悲しく立ちどまった すがりつき泣き続け飲み明かした街角に 黒の女の青い影だけが残る、 あの街のあの店の片隅でまたいつの日か きっと会えるさとつぶやいた君が悲しく、 終わった恋を投げ捨てた時の虚しさを、 俺は独り噛み締める雨の中で濡れながら、 あの日あの場所にいた君はもういないけど 哀しい微笑みはいつまでも忘れないさ いつまでも ・・・・・・・・・・・いつまでも |