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夜を超えてーある夢ものがたりー 完結編

2012/05/02 08:30


気付かないうちに 眠っていたようだ。

ずっと トンネルの中にいたから時間の感覚も失っていたらしい。

腕時計を見る。

もう朝・・そろそろ終点の駅に到着するはず。


しばらくして

眠たげなアナウンスが流れてきた。

ーまもなく
 終点○○駅に到着いたします・・・


わたしは 列車の先頭に目をやる。

やがて見えて来る 小さなひかりの点。

それは だんだんと大きく広がり

列車は明るさの中に 滑り込んでいく。


目が眩む・・・


そっと 目蓋を開けると

薄桃色に輝く世界。


列車は 小さな駅舎に そっと止まった。


視界に入ってきたのは 駅舎を取り巻くように咲いている
何本かの桜の木だった。

乗客たちは ほっとした足取りでホームに降り立った。


わたしは 一本の桜の下のベンチに腰を下ろす。

ーやっと ここまで来た・・・

しばらくは 何も考えず 花を見上げていた。


前日は 雨が降ったのだろうか。
花は 少し水に濡れていた。
光の粒をキラキラさせながら 朝の中に輝いていた。

その姿が あまりに瑞々しく
優しく
微笑みかけているようだったので

わたしは すこし 切なくなった。


ーそうだったのか・・・


やっと わかった気がした。

ホームの中には
きっと 近隣のボランティアの人たちが手入れしたのであろう
色とりどりの花々が咲きにおっていた。

その 何気ない控えめな美しさは
住人の日々の活力になり
この駅に降り立った旅人のこころを
優しく包み込む事だろう。

幸せの足音がすぐそばに聞こえる・・・・


最後の約束を果たしたら
この旅は終わろう。


ー明日からは こころからの微笑みを。

 こころからの 祝福を。


このよき春を忘れない・・



さあ、一番の列車を待って

朝の光る海を観ながら帰ろう。

新緑が 風に揺れるわが町へ・・







  





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