それは午後3時から始まった。
開場は午後7時30分予定。
残り時間は4時間30分。
まずは集まった出演者全員でステージ装飾に取りかかる。
キンブレ・向井さんのアイデアで、フラットのステージにアンティーク調のカーペットを敷きアンプ周りにロースタンドの照明を4つ配置する。
どこに置く?こっちがよくね?ところでコンセントはどこ?と模様替え的な試行錯誤をしつつもどうにか格好がつき、試しに会場を暗くして灯りをともしてみる。
「おお!素敵だ!」「ムーディーだ!」「まるでニューヨークのガレージだ!」「エロいっすね!」
時を忘れ皆が口々に歓喜の言葉を表すなか、微笑みに付き合いつつもいささか固い表情の男子がひとり。
誰にも届かない声で「マイクを…マイクを…」と呟いていたPA担当さち子13の姿が忘れられない。
だってマイク1本も立ってないのにもう午後4時半なのだから。
午後6時。
キンブレのしんぼう先輩とさち子13がメインとなって全員一致団結、死にもの狂いでPAを立ち上げ無事リハ開始。
社会人バンドにつきものの練習不足を補うかのごとくどこも猛烈なリハを展開したが、特にボンマドは融通を効かせてもらったと思う。
なぜならひとつはドラムのトミーの3連符、左手で終わる予定がこの日に限ってなぜか右手で終わるからだ。
もうひとつは、どうもギターのハンサムが本番で使うエフェクターをさっき楽器屋で買ってきたばかりだから、らしい。
「新品なの?良かったね!」と喜びあっていたのだが、年季の入ったギタリストからするとこの行為はすさまじい偉業らしい。
今回は身内でPAをやるから多目にみてもらうことができ、ともかくなんとか全バンドのリハが終わった午後の7時20分。
あと10分でいよいよ開場だ。
(つづく)
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