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花鎮めの旅 5 ー花灯りー

2012/04/20 07:30


いい花見でした。


桜のアーチで空も見えない程の地面に座り

静かに舞う花びらを観るとも無く
眺めましたね。

しだれ桜が降りこぼす小雪が
水面を 小舟のように揺れるのを見送りましたね。

嵐のあとの
うららかな午後を
ゆっくりと過ごしましたね。

みんな たいして言葉も発せず
満ち足りた笑顔を交わしながら。


陽はゆっくりと暮れてゆき
人々がそろそろ 家路に向かうころ
わたしは 一本の桜の下に立っていました。

それは
かつて 金沢城の裏手で見つけた桜でした。

他の群生から離れて
石垣の前に ただ ぽつんと立っていました。

大きくもなく
枝も大して張らず
多分 原種そのものに近い形で・・・

「ひとりしずか」

再び
その桜を見上げて立っていました。

そう、きっと
この桜を見せたかったんだと
そのとき 思い出しました。

さまざまな憶い、遥かな記憶が立ち上がってきて
どれほどの時間がたったんでしょう。

ふと気付くと
背後に 一本の燭台がおかれていて
桜を下から照らし出していました。

惚けたように立ち尽くしているわたしの為に
こころあるひとが
そっと 置いていってくれたのかもしれません。

その人もまた
「ひとりしずか」を 
そっと 観ていたのかもしれません。


その夜
確かに 過去・現在・未来が次々と立ち現れ
交錯し せめぎ合い 溢れ

やがて
静かに なりました。

ああ、きっと
自分は これを待っていたんだと・・
初めて 気がついたんです。



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