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「Vanzandt Bronson」

2021/11/05 01:00

 人生最後に選ぶべき自身のギターとして購入したVanzandt Bronsonを使用し始めて3年経ち、ファーストインプレッションと今の感覚の違いを考えながら、実際どう感じているのか等を書きたいと思います。

 Vanzandt Bronsonは、高額なVanzandtギターの中にあってはエントリーモデルなので、右利き用ならば10万円をちょっと超える程度の、いわゆるFender Japanくらいの価格帯に位置するモデルで、「ビギナーズモデルにしては高いなぁ。」と感じさせるかもしれないギターです。
 いわゆるFenderではMustangの前身簡略モデルDuo Sonicのコピーモデルです。

 Vanzandtギターは「新しいビンテージギター」という色合いが強いブランドです。
 しかし、この辺はとても奥が深く、使用3年目でいろいろ素晴らしいと思うところを感じました(後述)。

 さて、そのような前提の上で、ぼくのギターはそのBronsonをベースに、ボディをアルダーではなく2ピースブックマッチのアッシュボディに変更し、ピックアップの配線をトーン無しで、各ピックアップ単独のボリューム(後にさらにマスターボリュームとフロントボリューム)へ変更し、マッチングヘッドに塗装したセミオーダーモデルです。

 購入した際に驚いたのは、指板のマダガスカルローズウッドの光輝くくらいにツルツルに磨かれた造りの綺麗さと、極端なくらいに薄いサラッとしたニトロセルロースラッカーの塗装面、それにビックリするくらい細い握りのネック(とくにローポジション)でした。
 エントリーモデルということですが、各社の廉価版モデルとは全く違い、「Fenderでのビギナーズモデルを基に高品位にアレンジした独自モデル」というのが本当のところだと思います。
 Netにある動画等で見ていると、Vanzandt Bronsonの特にリアの音はDuo sonicやMustangよりもストラトキャスターのリアに似た音に感じますし、フロントもあのポーンというようなMustang系の音には感じられず、もうちょっと艶のある音に感じます。
 また、これはVanzandtギター全般に言えることですが、他のブランドのギターには無いカリッとしたクリスピーな中高域の強いオールドギターライクなトーンが加味される点、特にBronsonは強くそれを感じさせる音だと思います。

 Vanzandtギターは、アメリカ西部のピックアップブランドVanzandtが、Moonギター等を作る日本の工房に「Vanzandtピックアップに最適なギターの制作」を委託して作られているギターなので、メイドインジャパンのアメリカ主導な高品位モデルである点はエントリーモデルであっても当然といえば当然のブランドではあります。
 とはいえ、セミオーダーでボディー材の変更をしたモデルが20万円ですから(普通、オーダーギターは30万円以上が当たり前…)、ブランドの中ではかなりリーズナブルなことは確かだと思います。

 もともとのフェンダーDuo Sonicではポプラ材ボディー、Bronsonのオリジナルはアルダー材でフェンダーのオリジナルよりもストラトキャスター寄りに音をアレンジしていると思われますが、ぼくはアッシュ材で、かつ、後日リアピックアップをオープンにする事で、限りなくミディアムスケールのテレキャスターという考えに近い感覚のギターになりました。

 さらに、当初は各ピックアップ独自のボリュームコントロールとしてギブソンギターのようなボリュームコントロールをしていましたが、もっとフェンダー系らしいミックストーン(ミックストーンでのボリュームコントロール)とノイズキャンセルのため、ボリュームコントロールをフロント単独とマスターボリュームに変更した結果、さらにボリュームコントロール(歪みのコントロール)がしやすく多機能になりました。

 この「マスターボリューム+フロント単独ボリューム」の使い勝手は、ギブソンギターでやりやすい「リア・フルアップ(歪みトーン)と、フロント20%ボリューム(クリーントーン)で、ピックアップ切り替えによる音色の素早い変更」と、フェンダーらしい「ミックスポジションでのマスターボリュームコントロール」を両立できる素晴らしい配線だとぼくは感じています。

 このギター購入の経緯として、もともと、ぼくは人生最後のメインギターを決める上で、「音は基本的にテレキャスター、加齢と身体の各部の痛みや握力低下などから少しでも弦のテンションを弱めたいからミディアムスケール、腰痛や心臓への負担を考慮してなるべく軽いギター」と考え、ミディアムスケールでボディーの薄いテレキャスターが欲しかったわけですが、当初、KoolZにミディアムスケールのテレキャスターがあったためそれを狙っていました。
 しかし、左用は製造出来ないという返答で、かなり高額な費用をかけてカスタムギターを特注しないとミディアムスケールのテレキャスターは手に入らない事がわかりました。
 最後に自分が残りの生涯メインで使うギターとは言っても、60歳直前当時、定年退職(低賃金で65歳誕生日まで再雇用)を期にお金が無くなるからこその購入計画なので、出せるお金は20万円が限界でした。
 そこで、20万円でセミオーダーしてミディアムスケールのテレキャスターに近い仕様のギターを高品位に作ってもらえる手段が、Vanzandt Bronsonのカスタマイズ制作という手段だったのです。

 ぼくがテレキャスターから改変したかった点は、ミディアムスケールへの変更、ボディーをもっと薄く、インプットジャックの位置をボディー前面に、トーンコントロールを無くして2ボリュームへ、重さの理想は3kg…というものでした。
 そう考えると、もともとボディーは薄くてミディアムスケール、インプットジャックは最初から前面であり、ストラトやテレキャスよりはるかに安いDuo sonicのコピーが、ベースとなるギターに向いていると考えました。
 他のブランドでもセミオーダーならば20万円程度で何かしらのギターを作ることは出来そうでしたが、谷口楽器で相談していて、ブランドの特徴と品質の良さを考えると、ぼくの場合はソリッドギターではVanzandtが最良だろうという予想がついたのです。

 Vanzandtギターが他よりも優れている(自分が気に入る)点を考えていきますと、まずは、「オールドギターのデッドコピーではなく、現代の良い部分と過去の魅力的な音を上手くブレンドしていて、オールドギターフリーク以外の人も気に入ることができる新しいビンテージサウンドギターである」というところかと思います。
 例えば、クリスピーなオールドギターらしいトーンなのに、チョーキング等しやすい比較的Rの少ない、かつ、高さもしっかりあるフレットだったりする点などです。
 音も、前述のカリッとした中高域がありつつ、キンキンな高域は感じられないところはビンテージギター風ですが、ミディアムスケールなのにしっかりした低域も出ていて、その辺はビンテージらしからぬモダンな音です。
 ビンテージタイプのギターにありがちな、得意不得意なキーがあるような事もなく、開放からハイポジションまで音量感も変わらずにプレイ出来ます。

 では、自分にとって良いところだけで、ちょっと…と思う事がなかったのか…というと、そうではありませんでした。
 ひとつ目のちょっと…は、ネックの細過ぎる点でした。

 ぼくは薄めなネックが好きではありますが、幅が極端にヘッドに向かって細くなっていくものは苦手で、どちらかというと、ハイポジションでもローポジションでも握りが変わらないものが好きなため、Vanzandt Bronsonの5フレットより前の1~4フレットでのプレイはナット部分が狭いのでそれに比例して細過ぎるきらいがありました。
 ローポジションの際、かなり窮屈に感じます…。

 あとはオリジナルのDuo sonicでも同じなので仕方ない部分ではありますが、ピックアップセレクターの位置が使いにくい点です。

 ぼくのように、ボリュームコントロールと連動して頻繁にピックアップの切り替えをするプレイヤーにとっては、やはりボリュームコントロールと離れた位置では使いにくいと感じますし、ピックを落としたり、ミスをしやすくなるようです。
 マスターボリュームコントロール位置のそばにピックアップセレクターがあったらもっと良かったな…と思います。

 それからこれはどうでもいい部分かもしれませんが、当初はピックガードをアノダイズド(金色のアルミ)にしたいと思っていたのですが、左利きはプラスチックに限られてしまっていた事です。
 本当はアルミどころか、真鍮のピックガードにしたかったくらいなので、とても残念に感じています。
 理想は彫金したデザインのあるちょっと腐食して古くなった真鍮のピックガードで、ピックアップセレクターの位置をマスターボリュームコントロールのそばに移設できたら…最高ですね…。
 もう、楽器にこれ以上お金をかけられないのでやりませんが…、もし、真鍮ピックガードだったら最後です。

 さらには、フレットを押さえた時の音と開放の時の音質をもっと近づけたいと感じるので、ナットを真鍮かアルミかにしてみたかったなとも思います。

 まあ、欲を言えばきりがないのですが、現状、所持するギターの中で一番気に入っている事は事実です。
 宝くじでも当ててオリジナルギターを特注でもしない限りは、間違いなく、ぼくが棺桶に入るまで使う最後の1本になる事でしょう。

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