ついに、元KEYの遠藤さんにご紹介をいただき、SG Juniorにテレキャスターのフロントピックアップを増設する改造をお願いしていた264Guitars佐藤さんより終了・納品されて戻って来ました。
なかなか綺麗な出来上がりです。
よく目にするテレキャスターのフロントをハムバッカー化する改造とはまったく逆の発想で、たぶん、世界中でだれもこんなバランスが良いと考える人はおらず、ぼくひとりだけのカスタマイズになると思いますが・・・(笑)
考えてみるとぼくにとっては遅すぎる改造で、こうだったらいいのになと思った最初は、高校2年の時だったか・・・TVのスペシャル(2ピックアップ)を弾いてみた時に、もっとフロントの低域が出ないピックアップだったら使いやすいと思うし、1ピックアップのジュニアの方がカッコいい・・・と感じたところから端を発しています。
次には、P-90搭載のGreco MRを触った時にも(左用はありませんでしたが・・・)そう感じました。
そう考えると、アイディア的には46年間もあたためていたアイディアということになります(笑)。
P-90の方がハムバッキングピックアップよりもボリュームを下げた時に音のコントロールがしやすくて歪み音もジーと言わずにガリッとした音が混じって好きでしたが、リアピックアップには最高に最適な音ではあっても、強烈なノイズが気になっていました。
それからP-90のフロントは歪ませるとハムバッキングピックアップ同様にぼくにとっては低域がブーミーで音色コントロールしにくいため、ボリュームは常に7割未満(Aカーブで)で使うしかありませんでした。(ハムバッキングピックアップでは、さらにハイパスフィルターも装着しています。)
このテレキャスター用フロントピックアップ装着により、期待した効果は2つでした。
(1) ミックスポジションにしておくことでノイズの低減。
(2) フロントピックアップのブーミーな低域をカット。歪みにくいフロント音へ。
この際に改造するかどうかを迷った気になっていた事は、リアのみの音がまるで板切れを叩いたように良く鳴り、かつ伝達の速い音だったので、フロントに穴を開けたらその魅力が半減するのではないか・・・という点でした。
しかし、ピックガードを外してみたところ、もともとネックとのジョイントの接着剤を乾かすための穴が大きく開けられており、その心配はなくなったため、また、どうしてもリア一発だと同じアンプセッティングのままだとボリュームコントロールで歪みが抑えきれないため、バンドのライブで使うには厳しいところがあったので、「今の自分の環境下で使いやすいギターへ」ということで、改造を本気で考えた経緯です。
弦の張力がきつめで弾きにくいこのギターですが特別に軽かったことと(2.9kg)、リアピックアップの暴力的なまでにロックな音、マホガニー部分はたぶんラワンのような最低品質な木材だと思いますが、指板が焼メイプルで好みのメイプルという木材が混じっていた音がする点も、けして当たりものではない、むしろハズレものに限りなく近いであろうこのギターを道具として愛おしく感じ、改造の対象としたのだと思います。
で、実際やってみたメリットとデメリットを書いてみますと・・・
まず、メリット。
(1) 期待した効果の(1)(2)ともクリア。
(2) 当初考えていたフロント側の音、メロディーメーカーのような音よりもはるかに芳醇でフロントらしいスムーズで艶やかな音となった。
(3) ミックスポジションはノイズカットだけでなく、およそFenderにもGibsonにも無いバッキングに適した音色となった。
(4) ピックアップの切り替えは、まるで毛色の違うギター2台を持ちかえたような「ジキルとハイド」を思わせる「不良と優等生」の共演になる。
では、デメリット。
(1) ぼくには当てはまらないが、ジャンルやアンプのセッティングによっては太いリアと細いフロントの音色差が小さく感じるかもしれない。
(2) カチコチやギャンギャンに硬い音でアンプ音色を設定する人にとっては、何を弾いてるかわからない音になる可能性がある。
(3) ぼくの気に入るギターの特性でもあるけれど、ドンシャリ好きな人が使うと中域ばかりの音なので音が無くなる。
(4) あまり歪まさずに使うジャズ系の方などにはピックアップの出力バランスが悪くて向いていない。(ブルース系には向いている。)
そんな具合で、ぼく以外の方には向いていない方も多数かと思いますが(笑)、ぼくにはバッチリの改造だったと思います。
さて、ではどんな人に向いている改造だったでしょうか・・・。
たぶん、巨大な音量で弾くギタリストではなく歌もののバッキングをするギタリストで、基本は歪み音色にセットし、リアでは思いっきりロックっぽく弾きたいけど、ボリュームを絞ればオールディーな感じの音も出したくて、コーラス等をかけたバッキングトーンではもっとFenderライクな音も出したくて、リアではハードロックやフュージョン的な音色でも、フロントは同じセッティングのままでニューミュージック的だったり、ソウルだったり、ブルースだったりに近い音色が出したい・・・それを100%ではなく80%くらいの完成度程度でとりあえず満足し、簡単な手先の操作(コントロール)だけで行えることを望む人・・・という事になるのかなと思います。
さて、試しにFacebookの"Gibson SG Owners Group"にこのギターの写真を投稿してみたのですが、なんか面白いくらい民主党と共和党のように、吐き気がするというような絶対改変不許可な正規Gibsonフリークと、いったいどんな音がするんだ・・・という興味津々グループが半々にわかれました。
アメリカ人は日本人と違ってわかりやすいし、こっちが思ったとおりになってくれるので(たいして自分と変わらない思考)助かります。
曲の中で2~3台のギターを持ちかえればいい・・・という発想は、演奏場所に歩きで行って1台のギターでライブする普通の日本のライブバーでプレイするミュージシャンには不向きな発想で、1台ですべての曲をプレイする必要があるのです。
自分の音楽を表現するための「便利な道具」がギターであるならば、これは〇〇年に発売された由緒正しいエレキギターの・・・という話は歴史的価値観ではあっても「改変不可」には結びつかない。なぜならば、SGはレスポールモデルの新型として「改変されたモデル」であり、その後、レスポールモデルの看板の地位を剥奪された哀れな改変ギターそのものなのだから・・・。
ぼくはただ、Gibsonという枠からSG Juniorを開放し、JapaneseアレンジのAmerican guitarに発想しただけのこと。
リアピックアップはオールディーでありながらパワフルに、フロントピックアップは金属カヴァードのシングルコイルでスムーズにブーミーな低域無しで・・・という感覚がぼく自身より強くなったのは、1978年頃でした。
ファズではなくオーバードライブというエフェクターを手にした時、さらにハコバンのアルバイトで歪んだ音だろうがクリーンな音だろうが、ボリュームコントロールの必要性を感じた時からだったと思います。
1977年くらいからロックではない黒人のブルースギターなども聴くようになり、当初はオーバードライブで歪ませる音を小さく出力し、オーバードライブを切った生音の方が大きな音で出力するようにセットしたりしてバランスをとったりしていましたが、そんな頃からGibson系のギターでの同じボリュームでのピックアップごとの音のヌケ方や聴こえ方に不満を感じていました。
そんな時に1978年に最初のテレキャスターを手にして、ああ、このバランスは良いなぁと感じたところだったのではないかと思います。
さらにぼくのテレキャスターのセッティングではリアの裸弦側のピックアップの高さは磁極が干渉してしまうのではないかと思うくらい高くセットし(巻弦側は標準よりやや低く)、フロントピックアップは可能な限り下げる・・・というポジションでした。
そんなぼくの歪みエフェクターのセッティングはかなり強く歪む設定としていますが、ディストーション系の歪みは苦手なため、オーバードライブ系(今はアンプシュミレーターのサンズアンプ)で、ギター側のボリュームコントロールで歪みからクリーンまで調整しています。
なので、激歪みのリアフルアップと、同じフルアップでもフロントの音は「やっと歪んだクランチトーン」の方が都合が良いのです。
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