ライブで「使わない」「やっぱり使う」と心を二転三転させる憎いチビッ子ギターは、1997年に千葉の"GuitarLab"に特注して作ってもらった"elf"という小さなギターの紹介です。(先日使ってみて、やっぱり良い音だなぁと思ったので…。)
音はミニギターとは思えない素晴らしい音(いえ、所持するハムバッキングピックアップのギターの中でダントツに良い音)なのですが、狭いスペースであぐらをかいて座って弾くためのギターとして購入したので、立って普通に弾くとかなり弾きにくいという欠点があるギターです。
このギターの型はオリジナルが左利き用でエレアコだったそうで、"Cars"のギタリスト・エリオットイーストンがツアー等の際にホテルで弾ける手荷物ギターを・・・と特注したものだそうです。
その型にフロントだけにダンカン製ピックアップを搭載してエレキギター化したものが、池袋のヤマハで開かれていた個人ギタービルダーの展示会に出展されており、その写真を見て一目惚れし、作者の"GuitarLab 伊藤さん"にお会いして、金もないのに払える金額だけでなんとか作ってくれないか泣き落として作っていただいたギターです。特注ギターなのにとんでもない価格で作っていただいたので、値段はとても公表できません(笑)
伊藤さんからは、ぼくの今までのギター音色を聴いて「シングルコイルピックアップの方がいいんじゃないですか?」と念を押されたのですが、当時のぼくは小型ギターでミニムバッカーのゴールドトップと決めていたので(Fender系なのにミニハムのレスポールデラックスのゴールドトップをイメージしたミニチュア版…)(笑)、展示されていたフロントピックアップのみのモデルをベースに、リアにハイパワーなミニハムバッカーを装着し(後にローパワーな1970年代初期のレスポールデラックスのピックアップをオープンにしたものに載せ替え)、カラーを仏壇の金具のような有難い(笑)金色メタリックにしてもらい、コントロールはAカーブのボリューム1つとピックアップ切り替えスイッチだけにしました。
また、展示モデルよりもヘッドの傾斜角がはるかに少なくなっており、ネックを折ってしまう確率を低くしました。とともに、テンションが少しだけ緩くなる効果はあったかと思います。
ボディーは重めなアルダー材、ネックはハードメイプル材でローズウッド指板、ブリッジ駒はドイツ製の削り出しカチンコチンなアルミダイキャスト製です。ペグはゴトーのシャーラーミニタイプのものです。
製作者の伊藤さんは、このギターが高音質となる一番の理由は、このドイツ製削り出しブリッジプレートの威力が大きいと言われており、このギターに一番お金をかけている部分だとの事でした。
たぶん、ハムバッキングなのにシャープな響きと、所持しているギターの中でダントツにサスティーンが良いところはその効果なんだろうなと思います。
1997年当時、なぜぼくがこのギターを欲したか…なのですが、当時のぼくにはメンバーが揃って演奏できる環境がなくて普通のライブは行えず、狭いフリーマーケットのブースで座って小さくなってギターを弾きながらオリジナルの自主制作CDを実演販売していました。
ギターを、風呂場の椅子に座って(風呂場の椅子の下にエフェクターを置いたりして…)、自分の肩幅未満にギターをコンパクトに抱えてプレイしていましたから、「座って、かつ、小さくなってコンパクトにピグノーズアンプで弾く専用だけれど、小さな見栄えとは裏腹に音の品位は優れたギターであり、かつ、自分の所持する他のギターとは違って、小さな音でも迫力のある音。」を求めていたのでした。
かつ、見た目は骨董品的に見えるものがいいな…と。
そのようなフリーマーケットでの演奏を主としていたのは1993~1999年くらいで、2000年には当時のバンドは解散したため、人前でこのギターを使うことはなくなりました。
そのように、購入してすぐに炎天下の野外で使用し続けたため、ボディーの塗装はクラックだらけになって、購入して1年もしないうちにオールドギターの形相になってしまいました。
その後は、まったく違うコンセプトで録音のみをおこなっていて、人前でこのギターを使うことがあまりなくなりましたが、所持するハンバッキングピックアップのギターの中で一番好きな音が出るし、造りがやたらにきれいでとても気に入っていることもあり、とにかくこのギターはどのギターよりも自宅録音では一番使ってきたギターです。
なぜこのギターが素晴らしい音と感じるのか…ですが、小さな出力のアンプで際さな音で良い音を出したい…と考えると、「豊かな低域」とか考えがちですが、実際にそのような小型で小さい音のアンプでは迫力のある低域はもとより出力できなくて当然かと思います。
迫力のある…とは、ラウドな低域のある音…とは限らず、自身のコントロールできる帯域を多く含むトーンでの勝負が「迫力を表現できる」と思いました。
中心とするトーン域を、シングルコイルでは中高域を、ハムバッキングでは中低域を…と以前は考えていたのですが、1993年くらいからは考えがかわり、どちらのピックアップタイプであっても自分がコントロールを得意とする中高域にトーンの中心をもって来て良い音がするギターが良いと感じるようになりました。
いわゆる中間的な感じで「シングルコイルはシャキッとしつつも、太めでふくよかな音」「ハムバッキングはスムーズながら、硬めでスッキリした音」とすることで、どのギターを使っても自分の色、自分のコントロール範疇の広いトーンのギターであることが「良い音」を演出してくれると考えました。
自分の特徴として、低域も高域も強くなく、人間の可聴範囲の中心的な中域重視のトーン(簡単に言えば、オーディオ的ではなくてラジカセ的な音色)がぼくらしいトーンなのです。
それに従って考えると、このギター"Guitarlab elf"は「ハムバッキングピックアップのギターにしては硬くて分離感もありながら、スムーズなスッキリした音で、気持ちよく歪み、ミニギターでありながら素晴らしいサスティーンも、豊かな表現力もある。」となって来るのです。
人それぞれの「良い音」はあるのかと思いますが、状況別に七変化していろいろなタイプのギタースタイルを大きく弾き分けるスタジオミュージシャンのような人もいるし、「俺の音はコレなんだーっ」と変わらない1つのトーンで押し切る人もいる。
ぼくはそのどちらでもなく、基本は1つの音色のままだけど、ディレイのオン・オフと、ギター側のボリュームコントロールで「ひとつの音色の中での多彩さ」を作っていくタイプだと思っています。様々なタイプのある中、それぞれの中心となるトーンも人それぞれ…。
「良い音のギター」とは、そんなそれぞれの自分の表現力にピッタリあった音色に馴染むギターということなのでしょうね。
しかし、立って弾くと、ピッキング側の手首が90度に曲がって腱鞘炎を起こすし、抱えた時にネックが内側に来過ぎて弾きづらいため、座ってでしか使いたくないギターなのですが、所持するハムバッキングピックアップのギターの中ではダントツに高品位な音を奏でる信じられないミニギターなため、腱鞘炎の恐怖はあるものの本当は使いたいのが本音です。
それで、なんとか立って弾きやすいポジションをとれないか…と、ストラップピンの位置をしょっちゅう変えているため、ピンの位置もピンのカタチも常に変化しており、今はかなりボディーの内部の裏側に小さなピンを装着し、少し身体から離して弾きやすい設定にしています…が、自分の左腕が普通の方よりも90度近くズレているせいもあり、なかなか弾きやすくはならないのが現状です。
地べた座りすれば弾きやすいんですけどね。
そのようなわけで、また、オリジナルの特注ギターでもあるため、このギターを売却することはまずないと思います。
実はぼくがハムバッキングピックアップのギターの中で一番気に入っているギターが、何を隠そう、この"Guitarlab elf"です。
■以前、節電要請時にムービー化したもの
■最近のライブで使った際のムービー(後半)
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