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エフェクト

2016/09/16 00:00

 ギターの音色について、よく「宇宙的な音を出すな(リバーブやディレイを切れ)」とか、「歪まさずにクリーンな音でやれ」というご意見をいただく事があります。
 やや年配の方か同年代の方が多いのですが、もとはロックも好きだったのかもしれませんが、よくご意見をお聞きしているとブルースとジャズしか今は興味のない方が圧倒的に多いようです。

 仕方がないので、そういう要望に対してはペケペケのオールディーズロックンロール風からWHO風のサビに変化していく(歌は歌謡曲風ですが・・・)をやってゴマかすのですが、そういうバカっぽいサウンドはお気に召さなくて顔をしかめられてしまいます。ほぼ言われた通りのギター音色で出力したのに(笑)

 いや、他人様の心はよくわからないものです(笑) すみません、冗談です。
しかし、自分のスタイルを曲げてまで人の意をプレイしても、それは結果的に要望した方もこちらも良いと思える方向には向かないと感じます。
 「ありのままのあたしを愛して」じゃないですが、「今、ぼくが環境の中で考えて出す音を気に入っていただけたら有り難い」ですね。

 けれども「自分のスタイル」とはいったいどういうものなのでしょう。なぜリバーブ等が強めなのを好んでいるのでしょうか。。。

 ぼくは自分のギタースタイルはいつの時代でも普通にロックンロールだと思っているのですが、1950年代から今まで続いているロックンロールという音楽とエレキギターについて、自分の感覚の原点とかを考えていくと「なぜ、自分のギタースタイルがこうなのか」を理解できるような気がします。
 いや、もしかしたらギターだけでなく、音楽スタイルもそうかもしれないと感じて来ました。

「エレキギターのサウンドだっ!」と生まれて初めて意識してエレキギターを知った時の音ってかなり衝撃的なことだったんだと思いますが、ぼくが見て感動した最初のエレキギター映像や音は「人間ではなく人形」でした。
写真の1960年代英国の人気人形劇「サンダーバード」の劇中、ナイトクラブのシーンで人形になったクリフリチャード&シャドウズが演奏しているシーンでした。
持っているのはストラトタイプのバーンズのギター、ギター担当のハンクマーヴィンも本物そっくりでしたがバーンズのギターもそっくりでした。
ハンクマーヴィンのギターといえば深いテープエコー(今で言えばディレイ)が特徴ですから、それを標準として受け入れたぼくにとっては、他の人のギターは乾いたパリパリの耳に痛い音に感じてしまうわけです。

その印象から、深い空間系(リバーブやディレイ)を好んでいると思いますし、効果としては「少ない編成で、ギターが単音を弾くとサウンドが穴だらけになって薄っぺらくなる。」という問題を解決していると思いますし、「鋭角的なキラキラ感を出しながらも、サウンドはモワッと優しくできる。」という特徴が出せていると思います。

ブルースの好きな方でリバーブを嫌う方が知り合いにも数名おられますが、ぼくが一番先にも後にもこれだと感動したブルース曲は(本当のブルース通から言わせると、「これはブルースではなくてソウルだ」と言われることも多いようですが・・・)、BBキングの「The thrill is gone」という曲なのですが、1970年発売のアルバム「INDIANOLA MISSISSIPPI SEEDS」で発表されたこの曲のBBキングのギターはかなり強くリバーブ処理された音です。
ぼくは1972年頃に聴いてそのギターの音色を美しいと思い、そしてその音こそがぼくにとってブルースギターの音になりましたから、ブルースギターもリバーブ強めなサウンドなわけです。

巨匠の前例があるからそれが正しいという意味ではないんですが、ぼくがそれを聴いて感化され、そうでないサウンドよりもそれらに影響を受けた結果が「深めの空間系(リバーブ・ディレイ)を好む」ということです。

デッドな残響の無い無機質な世界よりも、ガランガラン音が響く天井が高くて壁が硬い環境の方がもともと好きだし、しょうがないですね。

人は白熱して自分のプレイに引き込もうというタイプと、自分自身の音像空間を広げて聞かそうというタイプがあるように感じています。
白熱したスーパープレイでは、速さと音圧が大切かと思いますが、速さを表現する上でのクッキリ感は大切だから、空間系はあまりかけない方が効果的なのでしょう。
自分自身の音像空間を広げるタイプは、横に広げるステレオタイプと、縦に広げる高低タイプがあるように感じています。
横タイプは「揺れ系」のフェイザーやコーラス、ショートディレイのような感じでしょうか。
ぼくは縦タイプで、空間の距離(高さ)のようなものを表現するのが弓矢から発祥した弦楽器の宿命であり、それは空想的に「空を飛ぶ」という夢の実現ではなかろうかと思っています。いえ、発祥時の弦楽器は間違いなくそうであったに違いありません。
高さや距離を時間として表現するとき、リバーブやディレイはとても便利に音が届くまでの時間感覚を表現してくれます。

なのでぼくの感覚では、リバーブを切ってギターソロを弾くと164cm(ぼくの身長)の高さから普通に人間同士が会話するように聞こえてくる音、リバーブにディレイを併せてかけてやると100mの高さから聞こえてくる厚みのある神のような存在からの音・・・。極端に言うとそんなイメージを持っています。

さて、次の問題。
まあ、ロックギターに対して「歪ませるな」は無理のある言葉なのですけれど、そこについても考えていきます。

当然ぼくらの世代が最初に聴きはじめるのはビートルズですが、中学1年のはじめだったでしょうか・・・White Albumを聴いた時にビートルズらしからぬ、グウィ~ンという伸びのある歪んだ美しい音が聞こえてきました。
友人に聞いて、それはクリームというバンドのエリッククラプトンが弾いているギターだと知りました。(なんだかプランクトンみたいな名前だなぁと当時は思っていました。)
そしてクリームのレコードを聴いてビックリ。。。「これがニューロックっていう音楽なのか」と興奮したわけですが、まだ当時はエレキギターを自分がはじめる等とは思っていなかったし、そんなに難解で難しそうなことを自分がやるなどとは思っていなかったのでした。

友達が質屋等でどんどんエレキギターを買ったり、兄貴からテスコやグヤトーンのギターをもらったりしているのを見て、いいなぁ~と憧れていた中学1年の冬頃。
当時は、T.Rexやデヴィドボウイが全盛期のグラムロックブームでした。
ぼくはグランドファンク・レイルロードに夢中でしたが、そんな時期にぼくらの仲間うちでエレキギターブームを起こしたのは確実にモップスの藤沢市民会館ライブでした。
エレキでも生ギターでも、みんなが「たどりついたらいつも雨降り」を弾いていましたから、ぼくもやりたくてたまりません。

で、中学2年の秋、「ベースだったらバンドに入れてやってもいい」と友達に言われたので、御茶ノ水の谷口楽器に左利き用のベースを捜しに行きましたが、ちょうど売り切れてしまっていたため仕方なくグレコのエレキギター・レスポールモデルEG-420を買いました。
最初はみんなと同様にペケペケ音で弾いていましたが、グランドファンクのパラノイドという曲みたいな音が出したいと思って楽器店に聞きにいったところ、ローランドのダブルビートというワウファズを勧められて購入。
まだギターを買って3ケ月で、確実にみんなよりもヘッポコだったのですが、ワウファズのおかげで「あいつは凄いプロみたいな音を出す」(笑)と言われ、学校ではそこそこ有名人に(笑)。
結局、「ベースだったらバンドに入れてやってもいい」と言っていた友達をベースにしてバンドをはじめた中学時代でした。

いや、あの時ファズがなかったらぼくのハッタリなど通用せず、ヘッポコのまま皆んなにバカにされ続けていたのではないかと思います。
まさにぼくを救い出して良い思いをさせてくれたのが「歪み」だったと思います。

それがあまりクウォリティを気にせずに「歪み」を好む理由かもしれませんね。
一時期は歪みが少ない音を好んでいた時期もありますが、今は逆に「年寄りの冷や水」効果なのか、この歳でもジャズとかでなくロックンロールギターでありたいと思っているためか、小さな音でプレイしているためにより迫力のある音にしたいためか、より強い歪みを求めています。


さて、無理やりな結び付けではありますが、ロックギターとジャズギターの大きな違いをぼく的に考えると、ぼくの感じるロックンロール感覚はややお笑いに近い芝居がかったもののように感じ、真面目にきちっとした仕事をするジャズプレイヤーのような感じではないのです。
だから、1970年代初頭のグラムロックブームの頃も、カッコいいバンドよりもただのロックンロールで、スレイドとかジョーディーとかみたいに「これはハロウィーンパーティーなのか?」と思うような妖精チックな笑える衣装のバンドが好きでした。
スレイドとかって、背中に羽があって蚊やトンボみたいに空を飛んでも、別におかしくなく感じるじゃありませんか。。。そうでもないか(笑)

もしかしたら、最初にギターに興味をもったのが「Shadowsの人形」だったのも、もしかしたら本物のShadowsよりも人形の方がぼくにはとっ突きやすく感じたのかもしれません。

そんな芝居がかった人形というお話のところで、紙芝居のような組曲で構成する我がBeware of Moving Wax dollは、まさにそういった形の集大成で自分自身の最大に好むカタチだったかもしれませんね。

さて、9月18日(日)午後14時から、東横線「白楽駅」下車・六角橋商店街・仲見世にあります”Sammy’s Hawaiian Cafe”でチャージ料無料のライブです。
本当に久々にFenderギターでライブやります。
ぜひ、遊びにいらしてください。お待ちしています。

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