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Gibson考

2018/07/26 00:00

 販売不振で破産申請したGibsonのギターなのに、思えば近年(この10年)、恐ろしいほど沢山購入しました。
 それまでは1980年代に1本、1990年代に1本、2000年に1本買っただけだったのに、この10年ではレスポール3本、ファイヤーバード2本、SGについては11本・・・、10年に1本の購入ペースだったのに、この10年は15本と、1年1.5本のペースで購入していました。
 ことにSG Specialについてはほぼその年のモデルを毎年購入した感があります。
 ギターで仕事をしていない人間で、こんなハイペースでGibsonギターを購入した人は世界にどれだけいるのかな・・・(笑)
 ずいぶん個人としてはGibsonの売上に貢献したと思うのですが(10年でだいたい200万円くらい・・・)、それ以上にエレキギターに興味を持つ人口が減っているから破産になってしまったのでしょうね。。。

 最近のGibsonギターについて、激しい品質落ち等を言われる方が多くおられるようです。
 特にぼくの購入する比較的価格が安いSpecialやその最廉価版ともいえるFaded(コピーモデルより安い事の多い器種)に対して言われていることが多いように感じます。

 確かに、ウォーン塗装などはインスタントな塗装工程で簡略化された安っぽいルックスですから、イメージは「ボロい!」という感覚もあり、言われていることはわかる気がします。
 しかし、Gibsonといえば30~40年前は30万円台が主流で、廉価版のJuniorやSpecialでも20万円台後半で売られていましたが、その頃より物価が2倍になっているにもかかわらず、30万円台だったスタンダードは12~18万円くらい、20万円台スペシャルについては6~10万円くらいと極端に値下がりしてコピーモデルより安くなっているので、あくまでも昔のGibsonと同等に品質を比較すべき今のGibsonは、ロボット製造製品ではなくてふんだんに人件費を使って厳選材を使って作られたカスタムショップ製のみであるだろうとぼくは思います。
 質落ちについてはカスタムショップ製との比較が妥当に感じますし、今のスペシャルについては価格でいえば30~40年前の感覚なら「国産Grecoのコピーモデルの半額~3/4くらいの額で買える本物(廉価版)」というのが本当のところで、昔で言ったらジョーディーとかハービー・フレッシャー・ギボンの価格に近いと思いますから、比較ならば当時の3万円台のコピーモデルと比較すべきかなとも感じます。

 逆にエレキギターが昔ほど特殊で先進的な楽器ではなくなり、手作りで高価な宝物感覚から実質的に音楽活動に使う一般的な工業生産消耗品となっていることを、スタンダードやスペシャルの価格の逓減によって老舗ブランドが表しているのではないでしょうか。
 けして品質落ちしたという感覚ではなく、老舗ブランドは「その楽器をポピュラーにした製造(または企画)メーカー」という事かと思いますので、「人知れず高額な一部のプロフェッショナル用にギターを製造する」を主務とはしておらず(その役目はカスタムショップのみ)、「一般的に広く知られ続けて多く使われるギターを中心に製造」することを生業としているのだと思います。

 そのような感覚でぼくが現代のGibsonギター(Fenderも)捉えているという前提でのお話になりますが、それを基本としてもなんと「今のSpecialは道具として面白いし、それなりに優れている」と感じているのです。

 まず、英語の意味として”Special”は「(通常とは違う)特別な」というような意味ですが、Gibsonでは最廉価版として開発された1ピックアップ仕様の少年用Juniorモデルの上位器種として位置づけられたものが”Special”で、スタンダードから見ると「バインディングやヘッドのロゴ等の直接音に関係ない装飾部分を省く、または簡略化」等を行い低価格化したもの・・・、Juniorモデルからみれば「Juniorの複数ピックアップバージョン」というランク付けになるのかと思います。
 しかし、それならばジュニアとスタンダードの中間、または単にジュニアのピックアップが1つ追加された「アッパージュニア」とかでいいんじゃないの?等と思えてしまいます。
 確かに当初のスペシャルはそのようなものだったのだと思いますが、最近はスタンダードも15万円以下で買えるようになって、単に廉価版であるものがスペシャルではなくなって来ているとぼくは感じています。
ぼくにはやはり「スタンダードに対して”Special(通常とは違う・特別な)”」という意味もあるのではないだろうか・・・と感じられるのです。特に最近のSpecialは・・・。

すなわち、スタンダードは「大きく変化はしないけれど、それなりに時代のニーズを組み入れたブランドの『当たり前』をカタチにした中心モデル」であり、スペシャルはそういった中核となるギターという概念ではなく、貧乏人用廉価モデルというだけでもなくもっとブランドが挑戦的に「あったら面白い的なもの・極端な嗜好に振ったもの・スタンダードで実用化するか検討する材料」のような実験的要素が強い気がしています。

たとえば”Faded”は「(若さ等が)衰える」というような意味があり、Specialシリーズの最下位に位置している同モデルの”Faded T”は、そのようにFadedの意味する「古臭く使い込まれたようなイメージ」と”T”は「トラディショナル(要は古臭く見えるモデル)」としています。
木肌がボコボコのままでウォーン塗装されている状態ではあるけれど、表面光沢が出るように磨かれ、風化したような気がしないわけでもない(笑)見映えです。それが安っぽさではあるかと思います。
 しかし、ぼくの購入した2017年のSG Fadedの挑戦的な実験はボディー鳴り勝ちのイメージの強いGibsonにあってはあり得ない「ネック勝ちのギター」である点で、メイプルワンピースネックと従来のローズウッドより硬いメキシコのローズウッドに近い木材を指板に採用することで、今までのSGらしいモサッとした伝達の遅いマホガニーのサウンドではなく、弾いたら途端に音がはやく鳴るメイプルのフェンダー的にシャープでアタッキーな新しいSGを作りあげているようにも感じます。
 軽量化とシャープな音に貢献していると思われるアルミ製の金属パーツも2017年からの装着です。
 ピックアップは490Rと490Tで、いわゆるオールドタイプのPAFの中域をさらに持ち上げた感じの音がするもので、ボリュームの操作にも敏感に反応する普通に使いやすいものです。
 そんなこんなで、たぶんGibson史上、一番硬い音のするSGではないかなと思います。
 ぼくはFenderプレイヤーが無理なく使用できる(またはGibsonに浮気するのに向いている)素晴らしい実践的で扱いやすい良いギターだと思いました。トラディショナルで古いGibsonのルックスでありながら、Fenderに近い持ち味を魅力とした新たなモデルへの挑戦だったのではないでしょうか。

 そして、先日購入した2018年のSG Specialはミニハムバッカーでありながらウルトラパワーな激歪みのモデルですが、やはりミニハムバッカーのためなのか、ボコボコに低域増強の音ではなく、中域全体に加えてカラッとした高域の成分も多く含んでいて、1970年代のギターと今のモダンなギターとの中間を行くような独特な音です。
 ピックアップのパワーだけではギター自体の音色に魅力なく、各弦のサスティーンも不揃いで安いギターとしてはダメなことも多いのですが、このギターはネック・ボディーともに「異常」と思えるほど良く鳴ります。木材の乾燥度調整?ボディー材とネック材のマッチングの妙?接着部分のつくり?・・・何が理由かわかりませんが非常識なほどに共振し、その共振が確実にボリュームとサスティーンという答えになって帰って来ていることだけは確かです。なぜ、特に素晴らしい木材を使っているわけでもないのにそうなるのかはわかりません・・・。
 このギターは、通常は硬くてパワーと低域のないミニハムバッカーの音を、強烈なサスティーンとパワーで改変し、新旧対応可能オールラウンドなハードロックギターとなった・・・というような実験結果に感じます。
 普通のハムバッカーのパワフルなものを使うのではなく、ミニハムバッカーを強化したもので、ミニハムの良さも活かしながらパワフルなギターを作ったのがミソだと思います。

 また、両方のギターとも、塗装は厚くきれいに塗られた光沢のある塗装ではありません。いわゆる塗装していない状態とさほど変わらない色が木材に染みついているだけの光沢のないウォーン塗装です。

 ウォーン塗装にすることで木材表面の丁寧な加工をすることなく、何度も塗装してはまた塗るという時間をかけずにサッと一度軽くふくだけで時間も人件費も節約できるので、価格は低く抑えて大量生産しやすくなるわけですね。

 しかし、ぼくの感覚では、厚い皮膜の塗装のギターは外気の影響を受けにくく、各弦や各音程の音量・音質バランスがとれているかわりに、よほどの良質な木材を使わない限り、その木材の癖的な音は出力しにくいと感じ、逆に従来の感覚では極薄の塗装でサッとふいただけのウォーン塗装は、木材らしい音はするものの、音量もサスティーンも不均一で楽器としてクウォリティーに欠けると感じていました。

 少なくともぼくの使った感覚として2011年型のSpecialまでのウォーン塗装のギターは確実に生鳴りがピックアップから拾う音に比例せず、パサッとした音で、楽器の木材が鳴っていても鳴らないギターがほとんどだったと感じています。

 それが変わって来たのは2013年製造のモデルからで、音に艶があるモデルが多くなり、生音とピックアップで拾った音の一致感が増しました。
余談ですが、それまでは2~3ピースのボディーの接合箇所の木目があっちこっち向いていて、酷くカッコ悪い見映えのギターが多かったのに対し、きちんと木目が合わされて美観も向上して来ました。

 さらには見た目の美観に加えて、2018年型SG Specialの全音程での絶対的なパワーとサスティーンのある鳴りや、2017年型SG Fadedの太いけれども硬くて今までにない素早い出力スピードのある鳴り方は、あまりに従来のSGとは違い過ぎて「スタンダード」には現時点では不向きに感じますし、ウォーン塗装のギターの弱点を完全克服しており、非常に前衛的かと思いますから、まさに普通ではないという意味のSpecialの名称に合致しているのではないでしょうか。。。

 以上の事からも、品質的には2011年から2018年にかけて毎年のギターを見て来た限りではありますが、様々なバリエーションによる違いはあるものの、確実に音色も造りも向上しているようにぼくは感じます。
 但し、山野楽器がディーラーだった頃の厳しくフジゲンが検品していた時代に比べると、やはり初期不良が発生したままで販売されているギターの数は増えているような気もします。(しかし、これは国内に入って来てからの検品の問題であり、製品の質自体の問題ではないと思います。)
 
 逆にSGでは昔はなかったまるでポールリードスミスのように豪華なシュープリームなどもありますし(左用はない・・・)、昔よりも優れたモデルもあるとすら感じています。
 メイプルトップのシュープリームにミニハム3ピックアップ(5way)があったら欲しいですよ。。。色はシースルーのブリティシュレーシンググリーンがいいなぁ(笑)

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