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人生で一番気に入っているアンプ

2014/05/14 12:20

 やや暑い日も多くなり、どうも胸に軽い痛みがあったり、すぐ息切れしたり頻繁に眩暈があったりと、イマイチ調子の優れないギター担当阿久津ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

 さて唐突ではありますが、ギタリストの皆さん、一番気に入っているギターアンプは何ですか?

 状況別には様々なアンプがあるでしょう。

 たとえば、今ぼくは運搬の楽さからZTアンプ・Lunchbox Juniorを使っていますが、このアンプの音が気に入って使っているわけではなく、利便性から使用しています。

 でも、そうではなくて、「ほぼ所持するギターが良い音で鳴り、基本的な音質が他に比べられないくらい気に入っている」そのようなアンプはそうはないのではないでしょうか…。

 厳密にギターアンプというには違うかもしれませんが、1993年の出会いから今まで、ぼくの心を離さないヤツがいます。

 TECH21社のSansAmpです。
 もう最初の何も冠詞の付かない「SansAmp」購入から数えると、写真のもので4台目になります。最新のものはボーカル担当の美妃からプレゼントしてもらったものです。

 SansAmpとの出会いは、1990年にギターを完全にやめてほとんどの楽器を処分してしまった後の1993年…。
 録音のみで音楽活動を再開することになり、「SansAmp(アンプ要らず)」という名前の録音ライン用ギターアンプに出会いました。当時は横浜駅西口岡田屋モアーズ内にあった帝都無線で見つけました。

 いわゆるギターアンプシュミレーターのはしりですが、現代のようにデジタルではなく、アナログ回路ですから、「音質調整が細かく出来るオーバードライブエフェクター」という感じも併せ持っています。

 ↓以前、ダラダラとiPHONEからのライブ放送で使い方を解説したビデオがありましたので、よかったら見てやってください。30分近くありますが…(笑)

http://twitcasting.tv/masakazuakutsu/movie/4876747


 1990年に一旦ギターをやめる前、理想にしていた音はあくまでもフェンダーアンプのクリアな音にエフェクターを使った音だったのですが、特に歪み系のエフェクターの選択が悩みのタネでした。

 そんな中で1980年代に気に入っていたのはパール社のオーバードライブでした。
 パールと言えばドラムのメーカーですが、当時はギターエフェクターもギターアンプも出していまして、ぼくは正規ではないけれど、発売日よりもやや早く手に入れ、かなり安価に購入させてもらえるモニター的なことを当時させていただいており、特にオーバードライブとアナログディレイはかなり気に入っていました。

 たぶん、パールのオーバードライブについては、他社がトーンコントロールを採用していたのに対し、この機種はパラメトリックイコライザーを採用し、かつ、イコライジングの幅(波形)を広くしたり狭くしたりコントロール出来、アンプの歪みのない生音との音色バランスを作りやすかったことが気に入っていた最大の理由かと思われます。

 また、他社のオーバードライブエフェクターと歪み方が違い、普通のドライブエフェクターはトーンコントロールのみで単一的にトーン変化するのに対し、もっとフィルター的というか、原音にイコライジングした歪みトーンを混ぜたような音だったので、使用するギターアンプの特性はそのままに好みの歪み音色を追加するような使い方が出来たことも使いやすかった理由だったと思います。
 かなり歪ませても腰砕けな音にならないという利点がありました。

 とくに当時ライブ場所の設置アンプはヤマハのJシリーズや発売されたばかりのFシリーズであることが多く、それらのアンプとの相性が良かったという点もあげられると思います。

 さて、きちんとバンドであるべきままの器材でプレイしていた時代はそれで良かったし、音色もかなり当時はアメリカ西海岸的な音色でしかプレイしていなかったので問題なかったのです。

 しかし、1993年バンド再結成は、もともとメンバーが一同に会すことは出来ないのがルールでした。
 休日の曜日がそれぞれ異なっていたこと、休日をバンドに使いたくない者もいたことで仕方なかったのです。

 各メンバーの家にマルチトラックレコーダーをぼくが持参して個別に録音を進めていくしかできない活動だったので、すなわち、ドラマー宅でドラムは録音済みのギターバッキングを聴きながらデジタルドラムのライン録音、村上宅でベースのライン録音、キーボードのライン録音、録音済みのギターバッキングを消去して新たにギターバッキングをライン録音、ボーカルを録音、帳尻合わせ的にギターのオブリガード等をライン録音…というような手順で録音活動のみのバンド活動をはじめたわけです。

 さて、そうなると、当時はもう既にギターアンプは手元に1台も残っていませんし、ライン録音でしかギターを弾く機会がなくなってしまったので「ライン録音用のギターアンプ」という存在がとても気になったわけです。

 もともとパール社のオーバードライブの使用方法が「クリーンなアンプの生音に合わせたドライブトーンを作る」という方法で、その後にボリュームペダルとディレイを接続していたぼくですから、オーバードライブの使い方は歪み用のアンプシュミレーターに非常に近かったと言えます。

 そんなこともあり、SansAmpのトーンとは別にあるプリアンプの硬さのコントロールはある意味、パール社のパラメトリックイコライザーのコントロールにも近く感じられましたし、ラインっぽさを解消してくれるマイキングのスイッチ(部屋の上部からコンデンサーマイクで集音したようなシュミレーション)や、チューブモジュレーションスイッチ(オールドアンプのようにハイとローがマイルドになった音になるシュミレーション)、ハイミッド・ローミッド別にあるブーストスイッチのおかげで、「出したい音が、まさにアンプ無しでバッチリ出せた!」わけで、パール社のオーバードライブに感じていた使いやすさを継承していたともいえたのだと思います。

 その後、Podなどのデジタルでアンプシュミレーターやマルチエフェクターが発売され、主流は便利なデジタルへと移行していきましたが、前のめりのブルースギター好きや、流麗好みではなくゴツゴツしたロックギターが好きなギタリストには、あのデジタルのほんのちょっと遅れてくる音や段階のある音色変化に違和感を感じてしまいます。

 それは「デジタル化して違う音になったCDの音」なのか「アナログが音質劣化したレコードの音」なのか…という、1980年代にオーディオについて争った音の好みの問題を思い起こさせます。

 いや、実際には常にジャストで突込み気味ではギターを弾かないプレイヤーには大して関係ないのだろうと思うのです。
 フレーズや概ねの音色や聴こえに関する問題ではなく、本当は、タイミングの違和感による音色変化の遅れに起因しているのだろうと思われるからです。

 現代のデジタルものについて、ぼくは「音が太過ぎる」といつも感じています。でも、それは「より太い音」をプレイヤー側が期待するからなのでしょう。
 いったい、普段どんなにギターアンプのすぐそばで音楽を聴いているのか…、ライブで演奏を聴く時はオンマイクでPAで拾った音だけがギターの音であってギターアンプから客席に洩れる音はギターの音として認識されないのだろうか…、と思うくらい太過ぎる音にぼくは感じますが、それはぼくが古い人間だからでしょう。

 単一の歪み音色で、ミュートのし具合で低域をコントロールし、ギター側のボリュームコントロールで歪み具合を調整していたのは「ギターアンプだけで歪ませていた時代」であって、今は「太い歪み音」「軽くアメリカンな歪み」「ブルースのようなエッジだけが歪むような歪み」等は、予めセットした音から選ぶ時代なんでしょう。だから、〇〇さんそっくりトーンが重宝される時代なんでしょう。

 でも、タメも突っ込みで作るぼくのような古い人間にとっては、やっぱり歪みはアナログ、かつ、硬めの音が得意な器種が向いているといえるようです。

 ぼくにとっては、すべてを失って「もう一度ギターを…」と思った時に使いはじめた思い入れを含む記憶だったからなのか、SansAmpよりも気に入った歪みを提供してくれるギターアンプにもエフェクターにも、未だ出会ってはいません。

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