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「その年々による理想のギターの変遷」

2022/03/14 00:00

 ギターをはじめた中学2年(1973年)から高校3年(1977年)頃は、ぼくの場合はフォークギターの経験がなくてエレキギターからはじめたので、当初はコードすらわからずにギターソロ?らしきフレーズばかり弾いていました。

 当時ソロというと「ナチュラルに歪んだドライブトーン」という事になりますが、1973年当時にはギターアンプは1ボリュームで爆音にしないと歪まないし、エフェクターもオーバードライブとかはまだ発明されておらず、ワウワウとファズとブースターくらいしか無い時代でしたから、1978年くらいにアンプにゲイン(プリアンプボリューム)とボリューム(パワーアンプボリューム)の2つのボリュームが付くようになり、それに伴いオーバードライブエフェクターが発売され、小さなボリュームでもドライブトーンを出せるようになりましたが、それまでの1977年まではどんなギターというよりも、とにかくパワーがあって歪みやすいギターが当時は必要としていたギターでした。

 ティーンの頃は「とにかくどんな事よりも歪むこと」が一番大切な機能でした。

 さて、オーバードライブやディレイが発売され、ボリュームペダルでギターボリュームが自由にソロ・バッキングの際にコントロールできるようになった1978年以降は、ハコバンのアルバイトをしはじめた事や、英国ロックンロールバンドばかり聴いていた高校生時代までとは違ってアメリカのロックやスタックスソウル・ブルースに興味を持ちはじめた事もあり、「歪みは自由にコントロールできるようになったので、もっとバッキング時の多彩な音色が欲しいと感じたこと」、「ギブソン系のフロントピックアップのブーミーなモコモコ音を自分がコントロールできないと感じていること」から、フェンダーのギターに興味を持ちました。

 ムスタング・ストラト・テレキャスターと弾いて思ったのは、自分にはテレキャスターが一番コントロールしやすかったという点でした。
 ストラトにはハーフトーンなどのストラトの魅力がある音ですが、ギブソンギターの代わりに使うようなことはできません。
 テレキャスターではハーフトーンではフェンダーらしいトーン、リアは使い方によってはギブソンギターに近いトーンも出せるし、フロントではギブソン系で苦手だったモコモコが解消されてスッキリとした音色でコントロールしやすかった点です。
 要するに「1台だけですべての演奏を対処していくことを考えると、自分がコントロールしやすいのはテレキャスターだった。」ということでした。

 いずれにしても20歳台は「幅広いポップス音楽を1本でオールラウンドに様々な曲を演奏可能にしてくれる音色コントロールしやすいギター」という選択肢だったと思います。

 30歳台になると音楽で仕事をすることも無くなり、ちゃんとボーカリストの居るバンドではなく、自分が貧弱なボーカルで歌う素人バンドになっていったため、ヌケもパワーもないボーカルには線の細いストラトの方が合っているということでストラトを使うようになりました。

 40~50歳台は迷いの時でした。

 1台のギターでアコから各種のエレキギターまで全て対応しようとデジタルモデリングギターのVariaxを使ったりもしましたが、イメージが掴めずに「他人の出した音で弾いている」みたいに感じてしまい、しっくり来ませんでした。

 売却してしまって失敗したなぁと思うギターもありました。2000年のアメリカンスタンダードストラトでフィエスタレッドのものでしたが、ストラトなのにテレキャスみたいな音がするギターで、とても弾きやすいし、とにかく音が強くて存在感のある音でした。他のギターが欲しくて売却してしまいましたが、今でも失敗したなぁと思っているギターでした。

 美妃が歌いはじめた2005年頃は、まだ歌といえる代物ではなく、音程もとれずに抑揚もなく、声が演奏にかき消されてしまうのを防ぐため、ドラムはカクテルドラムでスティックをアクリル製の短いものを作って音量を半分以下にし、それにあわせてギターとベースも低域が出ずに低出力のダンエレクトロ社のものに変更し、極端に音圧を下げた演奏で対応したりしました。

 ダンエレクトロのギターは、史上最悪にボロいのですが、なぜか中域ばかりに音が集まって高域に鈴なりがあるそのオールディーな音に楽しみがあり、かなりハマりました。
 けれど、美妃の成長とともにダンエレクトロの出番はなくなっていきました。

 ドラマー等の募集を諦め、NET配信中心(アンプを使わずライン入力)となった際、フェンダーギターよりもGibson系ハンバッカーの音の方が音が鋭角的にならずに遠く聞こえて混じりが良い・・・と考え、アンプをつかわずにPA直のライブも考え、レスポール・SG・ファイヤーバード等を使いました。
 しかし、どれも重過ぎて使いづらかったり、フロントピックアップの音がモコモコで使いづらかったりと、通常のモデルでは満足できませんでした。

 40~50歳台ではその時々の条件や歌い手に合わせて楽器を持ち替えていた、「迷いの時期」だったかと思います。
 短期間に一番いろいろなギターを購入した時期でもあり、いろいろなギターを経験した時代とも言えるかもしれません。

 60歳台となって今年で3年目となる今、まさに最後の選択肢となりますが、「いろいろな使用条件下の違いに対する対応や、好みの音色など、そのままの状態で自分にベストな楽器はない」と考えるに至るとともに、年齢・体調から来る肩凝り・腰痛・腱鞘炎・心臓の保護等々より、「機能や音よりも最優先する機能は、何よりも重量の軽さを一番として、それに加えて弦のテンションの楽さ・低いアクションによる弾きやすさ」となって来ました。

 しかし、音をど返しして軽さと弾きやすさだけ…という発想にはならず、Gibson SG juniorにテレキャスターのフロントピックアップを追加するという方法で、自分が理想とするGibsonギターが作れました。
 今、娘が歌っている条件下でのこのバンドの音楽としては、このギター1本で完璧ですし、軽さも2.6kgくらいなので、ちゃんと立ってライブが続けられます。
 ブリッジとテルピースが一体のシンプルな構造、リアはP90、フロントはフェンダーテレキャスター用のピックアップ、センターでノイズキャンセル、と、ギブソンのフロントが苦手なぼくにとって、唯一完全にコントロールできるGibsonギターになりました。

 娘の歌うバンドとしてはこの1本でもういいのかもしれません。しかし、バンドだけでなく個人としてぼくにはソリッドギターとしての理想がありました。
 それは、「自分にとってコントロールしやすいのはテレキャスター」「自分にはトーンコントロールは必要なく、マスターボリュームとフロント単独のボリュームがあった方が有意義」「テレキャスターより薄いボディーで軽量化されたアッシュボディー」「だんだん力が弱くなって来る状況を考えて、レギュラースケールではなくてギブソンのミディアムスケールを採用したギター」という条件で20万円以内で自分にとって最終的な理想のソリッドギターが作れないか・・・と考えたのが60歳定年退職時でした。

 なかなか20万円でフルオーダーはできません。谷口楽器で調べてもらったところ、テレキャスターではないものの、ほぼこれに見合ったギターが、VanzandtのBronson(Fender Duo sonicのコピー)でなら20万円で出来るとわかりました。
 すなわち、ボディー材の変更と配線内容の変更で、要望内容に近いギターとなるという事でした。
 VAnzandtギターは、Moonギターを作っている工房が、アメリカのVanzandtピックアップにピッタリマッチするギターをネオビンテージ的な高級ギターとして制作しているブランドで、Bronsonはその最下位に位置するギターです。

 最後のまとまったお金となった退職金で理想のギター1本と、維持費の安そうな長年乗れそうなクルマを購入すると決めていましたので、クルマはBMW320iを売却してVolkswagen UP!を購入、ギターは、色・ピックガード・マッチングヘッド・ボディー(2ピースのアッシュ)・配線の変更・総重量3kg程度という条件で作ってもらったのがぼくの"Vanzandt Bronson"です。
 ちっとも立派には見えないFenderでもVanzandtでも一番廉価版のギターですが、ぼくには最高のソリッドギターです。
 重量が実際には200gオーバーして3.2kgになってしまいましたが、それ以外は大満足のギターです。
 当初は、リアボリューム・フロントボリュームの単独ごととしていたのですが、センターポジションでのコントロールのしやすさを考え、マスターボリュームとフロントボリュームに変更しました。

 さて、しかし、あとわずか2年ちょっと後の65歳で定年再雇用も終了し、65歳からは少ない年金収入しかない生活保護同等の老人になりますが、そんな環境でもその後の音楽活動ができるのか・・・、暇な毎日の昼間・・・いったい何をして過ごせばいいのか・・・娘もいいトシなので結婚すれば父親とバンドなどやっていられなくなるだろう・・・、病院通いで極貧困の中でできる音楽活動は何なのかとか、いろいろな事を考えているうちに、この17年間は娘のイメージで音楽を作って来たけれど、65歳以降はひとりで音楽をやらなければ平日の昼間にできることはない・・・という事に気付きました。

 うーん、ボーカリストのように上手に歌えるわけでもなく、ひとりでプレイするけれどいわゆるアコギの弾き語りは、アコギ苦手だし、歌い続ける体力もないので絶対無理・・・。
 音楽性として、娘を対象とした音楽ならSG JuniorだけでもOKですが、もし、自分がひとりで平日昼間に週2日くらいで自宅から徒歩圏内の"Sammy's Hawaiian Cafe"や"La Fiesta"等でライブ(もし良かったら投げ銭制)をやろうと思ったなら何をどうやるのかを考えたところ、30分~40分くらいのミニライブで、「オケを使ったギターインスト」「オケを使ったボーカル入り」「ギターとボーカルの弾き語り」の3つをバランスしてやるしかないのかな・・・と思いました。

 そんな感じだと、なんとなくオールラウンドな感じなのでセミアコ(ES-335)でやりたいな・・・等と思い、ちょっと前のライブで使ってみたのですが、何しろ重量が重過ぎて腰への負担に耐え切れず、途中で他のギターに持ち換えるという残念な結果・・・。

 でも、様々な使い方をして、弾き語りをエレキでやると考えると、アコースティックな空気感のある響きは欲しいと感じてしまい、なにか良い手段はないかと考えた結果、テレキャスターのセミアコ版シンラインの激安コピーモデルで、ボディーが通常のテレキャスターよりも薄いレジェンドのシンラインコピーモデルのボディーが気に入ったので購入し、そのギターのネックをちょっとスケールサイズをダンエレクトロサイズにちょっと短くしたネックを264Guitarsさんに作ってもらい、ピックアップも264Guitarsさんに作ってもらいました。(ピックアップについては只今ちょっと調整中。)

 シンラインは「軽さ」という点でも最大に魅力的ですし、アコースティック感のある音なので、弾き語りや様々な音楽で使えそうなイメージがありますし、基本は自分の使いやすいテレキャスターです。

 そんなこんなで、娘とのバンドでは「Gibson SG JuniorにTelecasterのフロントピックアップを追加したモデル」、いわゆる「エレキギターを弾く」という一般的な必要では「Vanzandt 特注Bronson」、これから中心になっていく老後の活動では「264Guitars改造によるLegend ThinLineモデル」が中心になるのかな・・・という感じになりました。

 60歳以降は、「欲しいギターは左利きの場合、ドンピシャは捜せないのがわかったので、欲しい内容に作り直してもらう。」という方向で、今後の人生が終わる時まで使用する最後のギターを作った時期でした。
 しかし、その中心となっている機能は「軽さ」でした。

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